顧客の反応が変わる、効果的なチャットボットの設計ノウハウ

Ponchoによるペルソナ例

Kissmetricsの調査によると、顧客が商品から離れてしまう理由として、商品自体への満足度の低さは14%にとどまる一方で、顧客対応への満足度の低さは70%にも上るといいます。

そしてこの顧客対応のソリューションとして、ますます存在感が増していくと思われるチャットボットですが、当然ながら作り方によって顧客満足度は高くもなれば低くもなります。

小売業によるアフターサービスの支援ソリューションを提供するNarvarという企業。同社によるチャットボットでは、ユーザーによる高い返信率を達成しただけでなく、65%が人間と同じようにチャットボットを扱ったといいます。

たとえばやり取りの最後に「ありがとう」といったお礼を言ったり、絵文字をつけたりといった具合です。

こういった高いエンゲージメントにつながるチャットボットは、どのように設計すれば良いのか?

今回はTOPBOTというAI関連のリサーチ会社でCTOを務めるMariya Yao氏による記事をベースに、効果的なチャットボットを制作するためのノウハウをご紹介します。

ベースとなる考え方は、いかにユーザーの反応などをみながら継続的に改善していくことができるか?そのためにどのような考え方や設計が必要になるのか、という点です。

1.特定のペルソナを決める

もちろん旧来のテクノロジーをチャットボットに挿げ替えただけで、成果につながるわけではありません。

たとえば天気予報サービスのPonchoによるFacebookボットも、当初は利用率の低さに苦しんだといいます。すでにモバイルアプリは一定の人気をみせていたにもかかわらず。

今から振り返ると、ユーザーの具体的なニーズに応えきれていなかったのです。

天気をチェックするだけであれば、SiriやGoogle Nowなどの競合がひしめいています。そんな中でいかに自社の存在価値を見出すのか?

そのためにPonchoがまず手掛けたことが、理想のユーザー、つまり日常的に天気情報を必要とする人々のニーズを見つけることです。

詳細な分析によって、理想のユーザーによるニーズがありつつ、競合が手を付けていない隙間を探した結果、たどり着いたのが天気の緊急アラートだといいます。たとえば「サンフランシスコでは10分以内に雨が降ります。傘を持ってください!」といった具合です。

これによってボットへのエンゲージメント(利用率?)が300%上昇したといいます。

こうして自社の強みを見つけることができたら、集めたユーザーデータをもとに具体的なペルソナに仕立てます。

ペルソナを作る場合、ユーザーに関する定量データが重要な材料の一つになりますが、Ponchoの場合、Facebookの分析ツールを使って、エンゲージメントの高いオーディエンスの属性や興味関心を探っていったといいます。

Ponchoによるペルソナ例

2.会話の基本的な構造を明確にする

ボットのコア機能と対象ペルソナを明確にした後は、継続的に改善を続けていくための設計です。

そのためにはそもそもそのパフォーマンスを計測できることが必須になります。

そこでYao氏がポイントとして挙げたのが、ユーザーとボットによる会話の基本構造を明確にすること。定量的に計ることができる形で。

たとえば人間同士の会話であれば、「こんにちは」で始まり「さよなら」で終わるというのが、基本構造の一例になるでしょう。

では人間とボットではどうなるか?それはボットの種類によって変わってくる、というのがYao氏の主張。

たとえば「天気」「ファッション」「EC」「ニュース」という、ボットの中でも人気のジャンルでいうと、次が基本構造の一例になります。

・天気:天気に関する問い合わせから始まり、予報の通知に終わる
・ファッション:適切なファッションのレコメンデーションで終わる
・EC:ユーザーによる検索から始まり、購入で終わる
・ニュース:コンテンツへのリンクの表示で終わる

こうした基本構造に沿った定量指標を設けることが重要になるとのこと。

また何らかの指標をエンゲージメントとして計る際は、ボットのジャンルによって数値の水準が異なる点にも注意が必要です。

たとえばNarvarによると、新作のリリース情報などを発信するゲーム系のボットによるエンゲージメント率は、単に購買のやり取りをする小売系の2倍以上だといいます。 

さらに商品の価格が高いほど、ボットとのやり取りが多く発生する傾向もあるといいます。

3.改善指標を決める

会話の構造を明確にして定量化できるようにした後は、ユーザーとの会話の維持やエンゲージメントの向上に向けた改善フェーズです。

たとえばお笑いボットの例。ボットによるジョークに対して、ユーザーが「いいね」や返信をしてくれたのか、失敗に終わったジョークのパターンは何か、などを洗い出して分析することで、より適切なジョークのチョイスやタイミング、絵文字の使い方などを検討するといった具合です。

Yao氏によると、ここでよくある間違いとしては、返信速度や返信のボリュームといった、全体からみれば枝葉の指標の改善に没頭してしまうことだといいます。

そうではなくまずユーザーとの長期的な関係構築を念頭に置いた上で、細かな指標はあくまでそのサブとして扱うことが重要だそう。

たとえばグロースハックツールのMixpanelによるケース。同社は、ボットと人間による会話の長さや会話内容の充実度(絵文字が使われているか等)といった個別の指標はもちろん計測しているものの、それは大目標であるサブスクリプション数や長期的なエンゲージメントを改善するためだとしています。

4.ボットのベンチマークを決める

チャットボットはまだ新しいテクノロジーなので、何を指標とするかは試行錯誤が続いている部分もあります。

Yao氏は、SMSやメール、モバイルアプリ、人間によるカスタマーサポートといったボットによって代替されるテクノロジーをベンチマークするのが適切だとしています。

天気予報サービスのPonchoの中の人は、ベストなベンチマークは同カテゴリーのスマホアプリだとしています。

下の図は、ユーザーによるモバイルアプリの利用頻度(縦軸)と30日間の維持率(横軸)をジャンル別に示したもの。こうした指標をベースにしながら、ボットの成果を判断すべきだといいます。

ジャンルごとのモバイルアプリの利用傾向を示したマトリクス

ますます今後の普及が期待されるチャットボット。ただBotAnalyticsの調査によると、ボットによる一回目のメッセージで利用をやめてしまうユーザーの割合は40%にも上るといいます。きちんと成果につながるボットにするには、適切な設計・運用ノウハウが必要になりそうです。