人工知能が変える、企業による営業プロセスの未来

「営業スタッフのほとんどは、向こう10年で人工知能に置き換えられることになる」。 2015年9月、米カリフォルニア州バークリーを拠点とするLeadGenius社の共同創業者、Anand Kulkarni氏はこう大胆に予測した。同社は人工知能技術を活用した営業支援ソフトウエアを販売するスタートアップだ。 この発言だけを切り取ると、営業活動において人間が不要になると取れるがそうではない。「なくなるのは現在の営業のやり方だ」というのがKulkarni氏の主旨だ。同氏は、人工知能技術の発展によって、営業活動のさらなる自動化や近い将来の動向予測が可能になるとみている。 さらに著名ライターのSteve Olenski氏は、このKulkarni氏の発言を引用しながら、次のように主張している。 「現状の営業プロセスは消滅の瀬戸際にある。テクノロジーによって新たなやり方を迫られることになるだろう」。 人工知能技術によって劇的に変わると予測される営業プロセス。特に膨大な営業データとそれを扱うツールの利用を最適化することで、リードや売上の増加につなげることができるという。 具体的にどのように対応するべきなのか?Olenski氏による主張を紹介する。 リーダーシップによる変革 営業プロセスの変革に向けて、まずセールスマネージャーによるリーダーシップが欠かせないという。中でもデータやツールを使って営業プロセスを最適化できる能力を持った人材へのニーズが高まると予測している。見込み客リストの作成から各メンバーによるパフォーマンスの管理に至るまで、データが果たす役割の重要性は高まっているからだ たとえばCRM(顧客管理システム)による営業成績の管理機能。現在は各スタッフによる成約数などの把握にとどまるが、今後の技術の進歩によって、各スタッフの成績を予測することも可能になるという。 アナリティクスの徹底活用 営業データの活用体制が整ったら、次はデータのアナリティクスを徹底させることだ。営業プロセスにおけるアナリティクスの重要性は、多くの企業で急速に増している。Salesforceの調査によると、営業データのアナリティクスを1年以内に強化すると答えた企業は約6割に上る。 特に注目を集めているジャンルが予測分析だ。顧客に関する膨大な属性データや企業データ、行動データを集めた上で、近い将来に起き得る現象を予測するのだ。たとえばある顧客が購買に至る可能性について、過去のやりとりやオンライン上の情報をもとに予測することも可能になる。 顧客とのコミュニケーションの自動化 営業プロセスにおける人工知能関連ツールの役割は、今後ますます増大するとみられるが、見込み客と対話して顧客化へと導く役目は、相変わらず人間が中心に進めることになるだろうと、Olenski氏は予測している。 ただしそこでもテクノロジーを活用する必要性はますます高まる。その兆候は出ている。たとえばKulkarni氏が指摘するように、ソフトウエアが顧客向けに自動で作成するメールの精度は日に日に高まっており、もはや人間が作ったメールとの区別がつかない水準にまで達している。顧客データのアナリティクスを徹底させることで、個々の顧客が抱えている課題やその解決方法をより的確に盛り込むことも可能になるだろう。 この手の技術はまだまだ発展途上だが、本格的に実用化されれば営業手法を根底から変えるだけのポテンシャルを秘めている。 ただし繰り返しになるが、当面の間は人の手が完全に不要になることはないだろう。先に紹介したメールでさえも、文章のテンプレートは人が用意する必要がある。アナリティクスが優れた営業人材を置き換える自体にまで発展することはまだなさそうだ。あくまで一部の業務を自動化するにとどまるだろう。

機械学習によってビジネス課題を解決、実用化に向けた3つのポイント

人工知能(AI)関連の技術をビジネスで活用する動きが盛んになってきている。 特に機械学習(マシーンラーニング)は、その最たる技術の一つ。機械学習とは、大量のデータを統計的に処理することで何らかのパターンを発見し、将来の動向予測につなげるための技術だ。 人間では発見が難しい複雑なパターンの抽出や、事業改善に向けた試行錯誤のプロセス自体を自動化できる点が魅力だ。 しかし新しい試みであるだけに、実用化に向けた課題も多い。「活用のための方法論が確立されていない」「データサイエンティストが足りない」といった具合だ。 今回は米フォーブス誌に掲載されたコラムをもとに、ビジネス活用に向けたポイントを紹介していく。 機械学習の実用化、3つのステップ 機械学習という新しい技術の実用化に向けて、企業はどのように取り組むべきなのか? 同記事では、Hitachi Insight Group(HIG)でCTO(最高技術責任者)を務めるSara Gardner氏による考えを紹介している。HIGは、米カリフォルニア州に本拠地を置く日立グループの企業で、グローバルにおけるIoT事業を担っている。 Gardner氏によると、企業による機械学習の実用化に向けたステップは3つある。 ステップ1:ビジネス課題の明確化 まずはビッグデータの分析によって解決できるビジネス課題を明確にすること。 例えばある炭鉱会社が、採掘できない日を減らしたい、トラックの不備による修理費用を減らしたいといった課題を抱えているとする。 タイヤの修理費用は非常に高くつくことを考慮すると、この場合まずはタイヤの不備を引き起こしている要因を特定することが妥当だ。機械学習技術を活用することで、タイヤに不備が発生する時期を予測できるため、事前に適切なメンテナンスを施すことができる。修理費用の節約や非稼働日数の削減につながるだろう。 ステップ2:社内データの把握 次のステップは、社内にどのようなデータがあるか把握すること。機械学習による示唆の抽出には、過去の経験(データ)をもとにした学習が不可欠だからだ。 装置にセンサー機器を取り付けることで、分析対象となる故障データを集める必要があるかもしれない。しかしこうしたデータの収集が難しいケースもある。その場合はシミュレーターを使うことで故障データを仮想的に作り出すという方法もある。 ポイントは、ビジネス課題を定量的に把握できる指標を明確にした上で、データを収集することだ。例えばタイヤの修理費の削減に取り組んでいた先ほどの炭鉱会社であれば、「タイヤの空気圧の変化」等となる。 データの収集と同時に、大量のデータを処理して可視化できるツールを確保する必要もある。Gardner氏によると、日立がBIツールのPentahoを買収したのもこの理由だ。PentahoはオープンソースのBIツールで、大量の構造化・非構造化データの処理やビジュアライゼーション、アナリティクス機能などを備えている。 ステップ3:データ分析手法の考案 ここまでのステップで機械学習を活用する上でのゴールを明確にし、材料となるデータも準備できた。3つ目のステップは、こうしたデータを分析する上での手法を考え出すことだ。ここが最も難しいパートだという。 ビジネス課題やゴール、手持ちのデータの種類を考慮した上で、適切なアルゴリズムを選択する必要がある。適切なアルゴリズムを作り上げるためには、間違いを犯しながらも試行錯誤を続けていく作業が求められるだろう。 しかしこうした経験を持つデータサイエンティストは非常に少ない。そのため社内だけでなく、外部のサプライヤーも視野に入れて人材を探す必要がある。その際に求められるアルゴリズムやソリューションをあらかじめ明確にすることで、データサイエンティストの不足という課題をより浮き彫りにできるだろう。 そして最終的に重要になるのは、得られた洞察を事業価値の最大化につなげるために、どのような施策を実施するかだ。これには高度な専門性が求められる。 例えばタイヤの不備による機会損失を抑えようとした先ほどの炭鉱会社の場合、いくつかの解決策が考えられる。タイヤの稼働時期を短くする方法もあれば、メンテナンスの頻度を増やすやり方もある。複数の解決策の中から、機会損失を最小化できる方法を模索しなくてはならない。単に機械学習技術を使いこなせば、全てが解決するというわけではないのだ。 機械学習によって成果を出すには、ビジネスとITをつなぐための試行錯誤や調整が求められると言えるだろう。  

抑えておきたい、AppleやGoogle等が手掛ける人工知能プロジェクト22選

人工知能(AI)はもはやSFの世界の出来事ではない。 AI自らが自律的に学習するディープラーニング(深層学習)の発展をきっかけとして、大企業からベンチャーまで様々な企業がAI技術を使ったビジネス活用に取り組み始めている。 急激に拡大するAI産業をけん引しているのが、ITジャイアントと呼ばれるGoogleやApple、Facebook、Amazon等だ。彼らは自社が保有する膨大なユーザーデータを活用しながら、人工知能関連技術の開発に取り組んでいる。 今回は世界のAI産業を俯瞰する上で不可欠な彼らによる取り組みを中心に、主なAIプロジェクトを紹介していく。 ■IBM 企業によるAIプロジェクトというと、IBMが開発した「Watson」を思い浮かべる人も多いだろう。 2011年2月にアメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」に出演し、当時史上最強といわれたチャンピオン解答者に勝利したことで、世間での知名度を一気に上げた。 https://www.youtube.com/watch?v=KVM6KKRa12g コンピューターでありながら人と同じように理解・学習し、人間の意思決定を支援するコグニティブ(認知型)・システムと位置づけられるWatson。IBMは「Watson」ブランドの下で様々な製品やサービスを展開しているが、大きくは開発者向けツールと既成アプリケーションの2つに分類できる。 Watson APIs IBMが提供する開発者向けのAPI(Application Programming Interface)。Watson APIの活用によって、外部の開発者が自身のアプリケーションにWatsonの技術を取り込むことができる。 APIの種類は、画像識別機能を持つ「Visual Recognition」や、言語翻訳の「Language Translation」、文字を音声に変換する「Text to Speech」など19種類(2016年6月時点)に上る。 Watson Marketplace IBMは「Watson Marketplace」にて、Watsonを利用した既成アプリケーションも提供している。ショッピング支援アプリケーションの「Watson Trend」や自然言語を処理する分析ツール「Watson Analytics」、SNSでのコメントを分析する「Analytics for Social Media」など多岐にわたる。 SystemML 「SystemML」はIBMが開発した機械学習システムで、企業データの分析を目的とした業界特化型の機械学習アルゴリズムを作成するために活用される。SystemMLを取り入れたアプリケーションによるエコシステム構築を狙うIBMは、2015年に同システムのオープンソース化に踏み切っている。  ■Google 検索エンジンで馴染みのGoogleも、AI研究に多大なリソースを投入している。同社は「Google Brain Team」と呼ばれるAIプロジェクトの社内専門チームを設立。獲得した技術を検索エンジンやAndroid対応パーソナルアシスタントサービス「Google Now」をはじめとする自社製品に応用している。さらに研究成果をオープンソースとして公開しているほか、AIに関する研究論文も複数出版している。 TensorFlow Tensor Flowは機械学習に必要な数値計算を行うライブラリ。Google...

機械学習は絶滅危惧種を救えるか?

海に住む絶滅危惧種を保護する研究者たちの活動には、様々な困難がつきまとう。 まずは個体の数を正確に把握することが不可欠になるが、これが難しい。これまでは小型飛行機で海上を旋回しながら、目視で個体の数を数えていた。そのため莫大なコストがかかる上に、事故にあう危険もあった。 今ではドローンを遠隔から操作して、航空写真を撮影できるようになったため、こうした問題は解消しつつある。 しかしもう一つ難しい点がある。ドローンからは海上の航空写真が数万枚もあがってくる。これらを人が目視で確認して個体を数える必要があるのだ。 ちなみに以下の海上写真には絶滅危惧種である海牛が1頭いる。どこに隠れているか分かるだろうか? 正解は以下の画像で丸をつけたところ。確かによく見ると小さな黒いかたまりがわずかに見える。素人が正確に判別することは非常に難しそうだ。 こうした気の遠くなるような作業を数万枚の写真に対して行う必要があるため、なかなか調査の範囲を広げることが難しい。これが目下の課題だ。 海牛の保護に取り組む豪マードック大学のアマンダ・ホグソン博士は、こうした課題を機械学習技術によって解決しようとしている。 豪クイーンズランド大学と共同で開発した画像認識システムによって、航空写真の中から海牛の位置を自動で検知しようというのだ。 このシステムを開発するために、彼らはGoogleの画像検索や音声認識で使われている技術を活用している。Googleはこれらの技術を機械学習ライブラリ「TensorFlow」としてオープンソースで公開しているのだ。 今のところ同システムによる海牛の検知率は、人による目視の80%ほどだといい、今後さらに改善できる見込みだという。さらに海牛だけでなく、ザトウクジラや特定種のイルカといった他の海洋哺乳類での応用も期待されている。

ウーバーが機械学習による予測精度を強化、4年ぶりの大改修で

米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズが、配車アプリのデザイン改修を進めていると発表した。複雑化していたUIの簡素化に加え、機械学習技術を活用した各種予測機能の追加を含む大規模な改修となる。同アプリのデザイン改修は2012年以来4年ぶり。 同アプリは2011年に公式に公開されて以来、機能やサービスの追加によって UIが複雑化。従来のトップ画面には、ハイヤーの配車サービス「UberBLACK」や低価格配車サービスの「uberX」、相乗りサービス「uberPOOL」、SUV(スポーツ用多目的車)を配車する「UberSUV」といった複数のサービスが乱立していた。 今回のデザイン改修では、こうした複数のサービスを「Economy」「Premium」「Extra Seats」の3カテゴリーに集約することで、UIの簡素化を図っている。 https://www.youtube.com/watch?list=PLmVTG4mAK7nxdlbFP5LS-9peUykQKXcN8&v=I1DdoN6NLDg またユーザーによる過去の利用データと機械学習技術を組み合わせることで、使い勝手をより向上させているという。 例えば新機能「shortcuts」では、ユーザーの過去の走行パターンを解析することで、最適な目的地を自動で表示してくれる。仕事終わりの18時にアプリを開いたユーザーであれば、自宅や子供の学校、よく行くバーなどが表示され、ワンタップで目的地を選択できるといった具合だ。 またユーザー周辺の交通量や工事状況などのデータを活用し、最適なピックアップポイントを表示することもできる。参照元となる過去の交通データの数は、約20億件にも上るという。 同社のデザインディレクターのDidier Hilhorst氏は、「ユーザーにとって時間は貴重だ。彼らの時間を尊重したい」と話している。 ウーバーはこれまでにも機械学習を活用したサービスを提供してきた。例えばフードデリバリーサービスの「UberEats」では、注文時の交通量や過去の注文記録を参考に、最適な注文先を表示するなどしている。 同社で機械学習関連の責任者を務めるDanny Lange氏によると、同技術の導入によって配達にかかる時間の予測精度が飛躍的に向上したという。 「当初のUberEatsでは、配達先までの距離や自動車の速度、調理時間を考慮した上で、配達時間を正確に予測することが難しかった。しかし配達件数が1万件に達したころから、データをもとにした予測モデルを構築できるようになった。それからたったの数週間で、予測精度を従来より26%も引き上げることができた」(Lange氏)。 Lange氏は、今年9月にサンフランシスコで開催されたスタートアップ関連のイベント「Disrupt SF 2016」にて、次のように述べている。 「(機械学習技術によって)ニュートン力学から量子力学への移行に匹敵するほどの大きな革新が起きようとしている。”予測”や”可能性”といったことがより重要になる」。 またウーバーは、自動運転技術にも注力しており、今年8月には自動運転トラックの新興企業オットー社を6億8,000万米ドル(約700億円)で買収している。 人工知能関連技術を活用することで、人の手を介さない自動化の方向性を推し進めている同社。今回のデザイン改修に含まれる機械学習関連機能の追加も、その一環と言えそうだ。