コルタナ活用の先進事例、ナビタイムとマイクロソフトによる新たな顧客対応

企業による導入が進むチャットボット。

その効果といえば、「サポートセンターの人員代行」といった人件費削減や、ユーザーにとって面倒な作業の負担を軽減するサービス向上といったあたりが中心になっています。

今回は後者の「サービス向上」について面白い事例があったのでご紹介。「AI・人工知能EXPO」(2017年6月28日~30日)で開かれたセッションでの様子をレポートします。

コルタナを搭載、ユーザーニーズを先回りして理解

ネットサービスを使いこなしたり、Q&Aで必要な情報を探しきるというのは意外と難しい作業です。

サービス開発者側や一定のネットリテラシーを持つ人からすると、「こんな簡単な(だと思っていた)操作でつまずくの?」という場合も実は多いでしょう(ユーザビリティ調査とかやると本当にこれ思います)。

そこでネットリテラシーの有無を問わず使えるようにすることで、ユーザーのすそ野を広げる必要があるわけですが、そこでチャットボットが活躍するという話。

今回登壇したナビタイムジャパンは、旅行プランの作成や航空券・宿泊施設の予約サービス「NAVITIMEトラベル」などでチャットボットを活用しています。

「AIを活用することで、ユーザー自ら情報を探すのではなく、彼らが求める情報をこちらがくみ取って、かつ提案できるナビゲーションシステムを目指している」と、同社の小田中育生氏(開発部部長ACTSルートグループ責任者)は話します。

裏側の仕組みとしては、マイクロソフトが開発したパーソナルアシスタント機能「コルタナ」を搭載。これについては「思った以上に簡単に入れられるなという印象です」(小田中氏)とのこと。

詳細をお伝えします。

便利機能、「設定が多すぎて使いこなせない」という声も

ナビタイムジャパンは、「移動の課題を解決する」をミッションとして、各種のナビゲーションサービスを提供してきましたが、これに関してさらなる改善の余地を感じていたといいます。

それは多様なニーズやシーンに応えるために多くの機能を搭載している分、それらを使いこなしきれない人々も出てしまっているという点。

たとえば電車の乗換案内サービスには、「乗り換え少ない順」や「徒歩速度」といった多くの検索条件が用意されています。

「きめ細かく設定できて便利だと言ってくださる方がいる反面、設定が多すぎて使いこなせないという声もありました」(小田中氏)。

そこで、乗り換え案内のチャットボットを昨年9月にLINE向けにリリースするなど、AIの活用に乗り出しました。

ユーザーのあいまいな要望を理解

また別途提供している観光ガイドアプリ「NAVITIMEトラベル」では、さらに踏み込んだ形でAIを活用しています。

ユーザーが直接的にニーズを伝えなくても、言外の意図をくみ取ることで、きめ細かなサービスを提供できるようにしようという試みです。

たとえば旅行先の観光スポットを探しているユーザーが、「癒しが欲しい」といったあいまいな要望をしたとして、それに対してスパのお店を表示する。また「鎌倉でおいしいレストランを教えて」という要望があれば、好みに合ったお店を紹介するといった具合です。

同サービスは、主に海外からの観光客を想定ユーザーとして多言語展開しています。

そのためバックグラウンドもITリテラシーも多種多様なユーザーが使うことになるので、テキストメッセージという世界共通のUIで操作でき、かつユーザーの意図をくみ取ることができる今回の仕様は、必要不可欠ということでしょう。

コルタナの搭載、「思った以上に簡単」

こうした機能は、「癒されたい」「飲みにいきたい」といったあいまいな要望の意図を学習させることで、実現しているとのこと。

裏側の仕組みとして、マイクロソフトによるパーソナルアシスタント機能「コルタナ」を活用。ナビタイム側のアプリケーションと、コルタナのボットフレームワークをつなぎ、さらに入力された自然言語を理解するツールであるLUIS(Language Understanding Intelligent Service)といった各種AI機能を使うことで実現しています。

特に同サービスの肝になっているあいまいな要望の解釈という部分については、このLUISを使った学習が非常に重要になっているといいます。

またLUISは日本語を含む12言語に対応していることも、採用の決め手になったといいます。

「日本語に対応しているコグニティブサービスは、最近は増えてはいるが当時はあまりありませんでした」(小田中氏)。

2016年12月末から開発を始め、今年2月にローンチしたということで、開発期間はたったの2か月間だったといいます。

「スピーディーに開発できた要因としては、マイクロソフトさんと合同でワークショップを実施したことが大きい。ナビタイムのエンジニアとマイクロソフトが一緒になって、サービスの内容や会話の設計などを2日間のワークショップで考え、基本的なところはそこで完成してしまいました」(小田中氏)。

「ボットを開発したことがなく、作るのにどれくらい時間かかるんだろうと思っている方もいると思いますが、思った以上に簡単に入れられるなという印象です」(同)。

ナビタイムとして最終的に目指す方向性について、小田中氏は次のように話します。

「これまではユーザーが自ら検索して情報を探すというのがナビゲーションサービスとして基本的なところだったが、ユーザーが求めるものをこちらがくみ取って提案してあげる、そしてユーザーがそこから選ぶという時代になってくるのではないでしょうか」。

たとえば「リラックスしたい」「海に行きたい」「和食を食べたい」という複数の文章から、複合的に判断して「伊豆の温泉が良いですね」と教えてあげるようなサービスをイメージしているといいます。

複雑な入力、画像認識で省略

またサービス活用の障壁をなくして、幅広いユーザーが使えるようにするという意図の事例として、リコーのケースも紹介されていました。

同じく登壇した、日本マイクロソフトの大田昌幸氏(デベロッパーエバンジェリズム統括本部テクニカルエバンジェリスト)によると、リコーは社内向けのQ&Aツールとしてコルタナを搭載したチャットボットを採用したといいます。

この社内Q&Aでは、自分のPCに関する情報を入力する場面があるそうですが、このチャットボットではPC画像をアップすることで、その手間を省くことができるといいます。

「ユーザーの誰もがPCのリテラシーが高いわけではないので、PCの型番を答えられる人は非常に少ないです。『Surface 3』と『Surface Pro3』の違いを見分けるのは、簡単ではない人も中にはいます」(大田氏)。

またシリアルナンバーを手打ちで入力するといった面倒な作業も、PCの画像認識によって省略できるとのこと。

ユーザーがリテラシーの向上という形でサービスに合わせるのではなく、サービス側がユーザーに合わせるための施策としてのチャットボット。先進的な企業はすでに活用方法を模索し始めているようです。