抑えておきたい、AppleやGoogle等が手掛ける人工知能プロジェクト22選

人工知能(AI)はもはやSFの世界の出来事ではない。

AI自らが自律的に学習するディープラーニング(深層学習)の発展をきっかけとして、大企業からベンチャーまで様々な企業がAI技術を使ったビジネス活用に取り組み始めている。

急激に拡大するAI産業をけん引しているのが、ITジャイアントと呼ばれるGoogleやApple、Facebook、Amazon等だ。彼らは自社が保有する膨大なユーザーデータを活用しながら、人工知能関連技術の開発に取り組んでいる。

今回は世界のAI産業を俯瞰する上で不可欠な彼らによる取り組みを中心に、主なAIプロジェクトを紹介していく。

■IBM

企業によるAIプロジェクトというと、IBMが開発した「Watson」を思い浮かべる人も多いだろう。

2011年2月にアメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」に出演し、当時史上最強といわれたチャンピオン解答者に勝利したことで、世間での知名度を一気に上げた。

コンピューターでありながら人と同じように理解・学習し、人間の意思決定を支援するコグニティブ(認知型)・システムと位置づけられるWatson。IBMは「Watson」ブランドの下で様々な製品やサービスを展開しているが、大きくは開発者向けツールと既成アプリケーションの2つに分類できる。

  1. Watson APIs

IBMが提供する開発者向けのAPI(Application Programming Interface)。Watson APIの活用によって、外部の開発者が自身のアプリケーションにWatsonの技術を取り込むことができる。

APIの種類は、画像識別機能を持つ「Visual Recognition」や、言語翻訳の「Language Translation」、文字を音声に変換する「Text to Speech」など19種類(2016年6月時点)に上る。

  1. Watson Marketplace

IBMは「Watson Marketplace」にて、Watsonを利用した既成アプリケーションも提供している。ショッピング支援アプリケーションの「Watson Trend」や自然言語を処理する分析ツール「Watson Analytics」、SNSでのコメントを分析する「Analytics for Social Media」など多岐にわたる。

  1. SystemML

「SystemML」はIBMが開発した機械学習システムで、企業データの分析を目的とした業界特化型の機械学習アルゴリズムを作成するために活用される。SystemMLを取り入れたアプリケーションによるエコシステム構築を狙うIBMは、2015年に同システムのオープンソース化に踏み切っている。

 ■Google

検索エンジンで馴染みのGoogleも、AI研究に多大なリソースを投入している。同社は「Google Brain Team」と呼ばれるAIプロジェクトの社内専門チームを設立。獲得した技術を検索エンジンやAndroid対応パーソナルアシスタントサービス「Google Now」をはじめとする自社製品に応用している。さらに研究成果をオープンソースとして公開しているほか、AIに関する研究論文も複数出版している。

  1. TensorFlow

Tensor Flowは機械学習に必要な数値計算を行うライブラリ。Google Brain Team主導によるAIオープンソースプロジェクトの一つだ。PythonとC++に対応している。

  1. Google Cloud Machine Learning

また「Google Cloud Platform」と呼ばれるプラットフォームを通じて、Googleは同社の機械学習技術を開発者向けに公開。Google自身も自社製品に同サービスを活用している。画像検索や「Google Voice Search」と呼ばれる音声検索、翻訳、Gmailの自動予測返信機能などが一例だ。

  1. DeepMind

2014年、Googleはロンドンを拠点とするAIベンチャーのDeepMind社を買収した。DeepMindによる最も目立った功績といえば、「AlphaGo」と呼ばれるコンピューター囲碁プログラムの開発だろう。2015年10月、コンピューター囲碁プログラムとして初めて、人間のプロ囲碁棋士をハンディキャップなしで破ったことで話題になった。さらにDeepMindのチームは、ヘルスケア分野における機械学習の強化や、ディープラーニング技術の応用について研究を進めている。

  1. RankBrain

周知のとおり、Googleが自社の検索アルゴリズムについて具体的に語ることは少ない。しかしアルゴリズムの一環として「RanBrain」と呼ばれるAI技術を使っていることは認めている。RankBrainによって検索キーワードの意味内容をより正確に推測し、適切な検索結果を表示できるという。同技術は一般には公開されていないものの、テクノロジー業界での注目度は非常に高いといえそうだ。

 ■Microsoft

他のIT大手と同じく、Microsoftも相当数の人員をAI研究に投入している。経済からテクノロジーまで多彩なトピックにおける研究活動を手掛ける「Algorithmic Economics」やディープラーニング、機械学習、マシンティーチングなど多岐にわたる。研究成果は自社製品やサービスに随時適用している。

  1. Cortana

Cortanaは、Microsoftが開発したパーソナルアシスタントソフトウエア。同社によるAI製品の中では最も高い知名度を誇る。音声制御やキーボード操作などによって、メールの送信やスケジュールの設定、検索といった様々な作業を手助けするWindows 10に組み込まれているほか、Android版とiOS版もリリースされているため、すでに馴染みのある人もいるだろう。

  1. CNTK

Microsoftは、自社技術のオープンソース化にも力を入れている。機械学習ツールキット「CNTK」もその一つ。6月に公開した最新版「CNTK 1.5」では、プログラミング言語の強化やテキスト・音声読み取り機能の改良などがなされている。

  1. Distributed Machine Learning Toolkit

さらに別のオープンソースプロジェクト「Distributed Machine Learning Toolkit」(DMLT)は、機械学習アプリケーションのトレーニングを支援するフレームワーク。「LightLDA」や「Distributed Word Embedding」といった各種ツールも提供している。

  1. Microsoft Cognitive Services

また同社は複数のAI関連APIをサブスクリプションモデルで開発者に提供している。現状では画像処理・分析の「Computer Vision」、人物画像から感情を検出する「Emotion」、顔認識の「Face」、顔追跡の「Video」など多岐にわたる。さらにこれらのAPIを使ったサンプルアプリケーションを開発しており、そのうちのいくつかはソーシャルメディア上で話題にもなっている。

  1. Project Malmo

「Project Malmo」は、人気ものづくりゲーム「Minecraft」を使ってAIを育てることを狙った非常にユニークな試みだ。同プロジェクトでは、複雑な環境をAIに理解させたり、学習したスキルを問題解決に応用させるといった取り組みを進めている。同社は今後同技術のオープンソース化を進める予定だという。

  1. Tay

同社が開発した学習型人工知能会話ボット「Tay」は、Twitterのユーザーとのやりとりから会話を学んでいく機能を備えたチャットボット。意欲的な試みだったものの、人種差別や性差別などを学習してしまい、不適切な発言を連発する自体に陥ってしまった。同社は現在Tayの公開を中止。「問題が改善されるまでTayの公開は見合わせる」としている。

■Facebook

ソーシャルメディア大手のFacebookも、人工知能の分野で積極的な取り組みを続けている。主体は「Facebook AI Research」と呼ばれる人工知能研究所だ。自然言語処理やコンピュータビジョンといった分野での研究成果を自社製品に応用。Facebookでの顔認識機能やニュースフィードのランキングアルゴリズムなどに活かしている。またAIに関する論文を複数出版しているほか、オープンソースプロジェクトも手掛けている。

  1. Wit.ai

Wit.aiは、Facebookが2015年に買収した自然言語解析ソフト。人とコミュニケーションするボットのAPIを開発者向けに提供しているほか、ユーザーとやりとりできるモバイルアプリなどに活用できる音声認識機能も備えている。

■Amazon

Amazonで表示されるおすすめの商品を購入したことのある人は多いだろう。このレコメンデーション機能でも機械学習の技術が活用されている。AI技術の今後について、AmazonのJeff Bezos CEOはこう述べている。「今後20年間でAIが社会に及ぼす影響は計り知れない」。同社は今年4月にAIスタートアップのOrbeusを買収するなど、AI分野に注力する姿勢を強めている。

  1. Alexa

Alexaは、同社製の人工知能スピーカー端末「Echo」に搭載されているパーソナルアシスタント機能。音楽の再生や質問への回答、商品の購入をはじめ、ユーザーによる様々な要望に応えてくれる。またAmazonはAlexaの技術を開発者向けに公開してもいる。

  1. Amazon Machine Learning

Amazonのクラウドコンピューティング部門であるAmazon Web Servicesでは、開発者向けにAI関連サービスを提供している。それがAmazon Machine Learning(AML)だ。AMLによって、開発者はAmazonによる機械学習テクノロジーを自身のアプリケーションで活用できる

■Apple

他のIT大手に比べて、Appleは自社のAIプロジェクトについて多くを語っていない。ただ同分野に多大なリソースを投じていることは確実だろう。機械学習に関連した人材採用活動が確認されているほか、最近ではAIスタートアップであるEmotientとVocal IQの2社を買収している。

  1. Siri

iOS端末に搭載されている音声アシスタント機能のSiri。ユーザーの様々な質問に対して、時にウィットの利いた答えを返してくれるこの機能は、一般的に人々がイメージする人工知能に近い存在感を出している。

■Intel

IntelによるAIプロジェクトの多くは、機械学習に注力したものだ。過去にはいくつかのAI関連スタートアップを買収している。

  1. Saffron Technology

IntelがAIスタートアップのSaffronを買収したのが2015年10月。Saffronが提供するアプリケーションは2つ。コグニティブ技術を活用して製造業によるスマート製品の開発スピードを加速させる「Streamline」と、ビッグデータ専用ビジュアル解析機能を持つ「Advantage」だ。

■Yahoo

YahooのMarissa Mayer CEOも、折に触れてAIの重要性に言及している。同社はこれまでに自社のウェブサイト運営を支援する目的で、いくつかのAI関連ツールを開発している。

  1. Caffe on Spark

Yahooは今年、「Caffe on Spark」と呼ばれるツールをオープンソースで公開した。これはHadoopクラスタ上で機械学習を実行する機能を備えている。主に写真共有サービス「Flickr」で活用されているようだ。

  1. SkyPhrase

YahooもAI関連企業の買収を進めている。2013年にはSkyPhraseを買収し、同社による自然言語処理機能を開発者向けのSDK(ソフトウエア開発キット)として提供している。

■Salesforce

他のIT大手のリーダーたちと同じく、Marc Benioff CEOによるAIへの関心は非常に高い。「AIファーストの世界がやってくる」と予測する同氏は、これまでにAI関連企業を複数買収している。

  1. MetaMind

Salesforceが今年4月に買収したMetaMindは、ビジネス関連アプリケーションにディープラーニングや人工知能の技術を持ち込むことを目指した企業。現在MetaMindによるサービスは、Salesforceによるクラウドコンピューティングサービスに統合されつつある。

  1. PredictionIO

PredictionIOは、2016年2月にSalesforceに買収された。PredictionIOは、開発者による予測エンジンの制作を支援する機械学習技術をオープンソースで提供している。