AIデータがないなら買えばいい、要注目の「データ市場」とは?

言うまでもなく、AI(人工知能)関連の施策を実施するにあたって、学習データの用意はとても重要になります。

機械学習といったAI関連の技術自体は、エクセルやパワポのようにどんどんコモディティ化していくであろうことを考えると、差別化となるのはどれだけ適切な学習データを確保できているか、という点になるでしょう。

けれども必要なデータをすべて自社でそろえることができるケースは、中々レアなのではないでしょうか。

ただもし必要なデータを適切な価格で、個人や法人から買うことができたらどうでしょう?

施策の自由度が一気に広がるのではないでしょうか。

たとえば個人から位置情報や歩数といった行動データを買う。法人から各種センサー機器経由のデータを買うといった具合です。

つまりデータを欲しい人と提供したい人をマッチングさせるプラットフォーム。株式市場のデータ版というイメージです。

いわゆる「データ市場」と呼ばれるこの仕組みは、すでに欧米では活発化してきているといいますが、日本において先んじて取り組んでいる企業が、2014年創業のEverySenseです。

第1回AI・人工知能EXPOに登壇した同社の眞野浩CEOによる講演をもとに、基本的な情報をお伝えします。

ただ先に断っておくと、データ市場はあらゆるデータ売買を仲介するプラットフォームということで、何もAIの文脈に限った話ではありません。

現状のIoT、データ流通が不十分

「今のIoTでは情報が十分に流れていない。インターネットオブシングスではなくイントラネットオブシングスだ。つまりインターネットを使ってセンサー機器による情報を発生させてはいるが、その情報が流通していない」。

各種のセンサー機器によって発生したデータを活用する際の課題について、眞野CEOはこう語ります。

眞野氏によると、ヘルスケアや建設、自動車など、各業界の中ではIoT関連のデータ活用が進み始めているものの、こうしたデータを業界横断で活用できていないというのです。

ビッグデータがタコつぼ化している原因について眞野氏は、「人間の心理として、価値が高いものは当然ながら所有していたい。人にあげたくない」と話します。

そのため各業界でタコつぼ化しているデータに横ぐしを刺して、データの流通を促そうという仕組みが、同社によるデータ流通プラットフォーム「EverySense」です。データの売買を中立公正に仲介することが目的だといいます。

「所有しているビッグデータは高付加価値化して財に変えたいという動機がはたらく。しかし売るために取ったわけではないけど、ただあるというデータであれば、外に出しても良いとなるかもしれない」(眞野氏)。

売るために取ったわけではないデータというのは、たとえば道路の混雑状況やCO2の排出量、位置情報、企業の独自データなど、各種センサー機器から発生するデータを指します。

データを第三者に渡す個人や法人からしてみれば、様々な懸念がつきまといます。

個人情報は守られるのか?公開した情報の価値に値する対価は得られるのか?といった具合です。

またデータを買う側からしても、提供されるデータが不正なく信頼のおけるものかが懸念されます。

EverySenseは両者の間に立つ中立公正な仲介者として、これらの課題を解決することを目指すとしています。

データ流通の要、EverySenseの仕組み

EverySenseは、データを売る人と買う人がいるデータ市場を農業に例えます。データを売る人が「ファームオーナー」。買う人がそれを使って料理をする「レストランオーナー」という形です。

データを売るファームオーナーは、「私がスマホで溜めた歩行データを売ります」といった条件をプラットフォーム上で公開します。一方でデータを買うレストランオーナーは、欲しいデータの条件を記載した「レシピ」と呼ばれる注文書を作ります。

両者がマッチングすれば取引成立です。データがいくらになるかは、ファームオーナーとレストランオーナーの取引で決まります。

たとえばデータ提供者の性別や年代をはじめ、より詳しい属性情報を求めるとその分だけ価格も高くなります。また同じデータでも1分に1回なのか、1時間に1回なのかといった取得頻度でも変わってくるといいます。

個人情報を販売するとなると、プライバシーの問題が懸念されますが、ファームオーナーはレストランオーナーの信用性を確認した上で、販売するかどうか決めることができます。またそもそもどの属性情報を販売するかはファームオーナー自身が選べます。知らない間に個人情報をたくさん抜かれていたというようなことが起きない仕組みになっているのです。

データを提供したファームオーナーは、報酬としてポイントが付与されます。そのポイントはEverySenseのサイトや金券ショップなどでマイルや現金に換えられるといいます。

こちらが取引の一例を示した図です。ファームオーナーは、e燃費データ(実燃費やガソリン価格データなど)を所有するイード、レストランオーナーは不特定多数のユーザーです(EverySenseによる資料より)。