クラウド経由の機械学習サービスは普及するのか?

MLaaS市場規模(2016~22年)

人工知能(AI)のビジネス活用というトピックの中で、注目が集まる「サービスとしての機械学習」(MLaaS)。つまり各種の機械学習サービスをクラウド経由で使えるようになるというもの。

分かりやすい例の一つが、Googleの「Google Cloud Machine Learning」プラットフォームによる画像認識機能。Airbusが衛星写真に写る雪と雲の識別に活用するなど、Googleフォトに類似した機能がビジネス面でも使われています。

また別の一例でいうと、スポーツの試合会場に広告を出稿した企業のケース。従来は広告の露出度を計るために、広告がテレビに映った秒数を人間のスタッフがストップウォッチで計測するなどしていました。しかし独IT大手SAPによる機械学習プラットフォームを使えば、機械学習によってより迅速な計測が可能になるといいます。

このように機械学習サービスをクラウドで提供することで、より手軽に利用できるようにするMLaaS。最近になって市場のさらなる拡大を予想する調査結果が相次いでリリースされた一方で、その普及を疑問視する声もあがっています。

どういった状況なのか、詳細をまとめてみました。

MLaaS市場、年率4割で拡大へ

MLaaS市場の拡大を予測する調査結果が、相次いでリリースされています。

たとえば米Market Research Futureの調査によると、2022年のMLaaS市場規模は46億米ドル(約5200億円)。2016年以降の年平均成長率(CAGR)は約40%ほどだといいます。

MLaaS市場規模(2016~22年)

主要なMLaaSプレーヤーとして挙げられているのが、GoogleやBigML、Microsoft、IBM、Amazon、AT&Tなど。地域別ではアメリカやヨーロッパの市場が多くを占めるものの、日本を含むアジアでの拡大も顕著になるとしています。

他の調査会社によるレポートに目を通すと、市場規模の数字にはズレがあるものの、年率40%前後での成長という点ではほぼ一致しているようです。

MLaaSの活用法

機械学習サービスを利用するにあたって、MLaaSのようなアウトソーシングと自社での構築では、どちらが望ましいのか?

たとえば米調査会社Jackdaw Researchのアナリスト、Jan Dawson氏は、Ars Technicaの取材に対して、こう答えています。

「単一の機械学習プラットフォームに依存してサービスを構築するのはリスキーだ。とはいえ自社でインフラを構築するよりは、はるかに好ましい」。

またDeloitteのアナリスト、Anthony Abbattista氏は次のように話しています。

「我々は同じサービスを5年や10年継続して使うような想定はしていない。その時々に合わせて柔軟に乗り換えれば良い」。

そのような使い方の一例が、法人向けクラウドストレージサービスのBox。同社は、画像認識機能にGoogleによるプラットフォームを使っていますが、最近になって別のサービスでは、MicrosoftによるAzure Machine Learning Platformを採用する考えを示しています。

もちろん場合によって、インハウスで構築する企業も出てきています。たとえばPayPalが2013年にリリースした不正検出AI。「(PayPalが抱える)リスクや課題が非常にユニーク」(同社Hui Wang氏)なことから、その他大勢のために作られたクラウドサービスでは間に合わないと判断したようです。

またDeloitteが2015年にリリースしたホワイトペーパーで懸念を示したように、金融情報や各種個人情報をクラウドで扱うことの危険性もあります。

このようにMLaaSにも懸念点はありますが、Dawson氏は総合するとまだまだ市場は伸びるとみています。

「MLaaSを活用することが、企業にとって先進的だったりイノベーティブだというイメージにもつながるとみられているからだ」。

MLaaSの課題

MLaaSの普及に向けて、よく挙げられる課題の一つが技術者の不足。そしてこの課題について、より深く言及しているのが、シリコンバレーの投資家Bradford Cross氏です。

2009年以来、機械学習関連のスタートアップを複数立ち上げてきたという同氏は、MLaaS市場の拡大について否定的な見方を提示。2017年3月のブログ記事の中で、こう書いています。

「サービスとしての機械学習というアイデアは昔からあったが、ことごとく失敗してきた。そもそもノウハウがある人たちは単にオープンソースで足りてしまう上に、そうでない者は何をやってもダメだ。たとえAPIがあったとしても」。

MLaaSは、機械学習の理論と実践を理解した企業にとってはオーバースペックである一方で、ノウハウがない企業がビジネス価値につなげるには、より包括的なソリューションが必要になるといいます。つまり「帯に短しタスキに長し」ということです。

「AmazonやGoogle、Microsoftはクラウド戦略の構成要素の一つとして、MLaaSを強化しているが、私はこうしたAPI活用しているスタートアップや大企業を目にしたことがほとんどない。これまでにAI事例は山ほど見てきたから、私のサンプル数が少ないということはないだろう」(Bradford氏)。

そのためMLaaS関連のスタートアップは、2017年中にはビジネスとして行き詰まりをみせ始める、というのがBradford氏の予想です。

今後MLaaSが、企業ニーズを的確に考慮したサービスとなって普及するのか、単なる技術ありきの取り組みにとどまり尻すぼみに終わるのかが、問われている状況なのかもしれません。